【第9回入選作品と寸評】

殿堂入り

「が・大研究Part3」 川上 多岐里(東京都/小6)

2年連続の大賞受賞の翌年にあたる今回、前2作に勝るとも劣らぬ見事な作品を応募された。 よって、川上さんを昆虫研究大賞殿堂入りとし、長年の努力とその成果を讃えることとした。
 これを機に、今後ますます蛾の研究に励まれることを願う。
 さて、その作品であるが、前回評価された点をそのまま継承し、さらに磨きをかけたといってよい。
 いつもながらその美しい標本は、見る者を魅力あふれる蛾の世界に誘う。蛾が苦手という人にも是非ご覧いただきたい作品である。
 川上さんの標本製作技術は、すでに専門家の域に達したとの評価があり、特にこれらは賞に応募する作品として、丹念に仕上げられたため、大人が研究用に作る標本よりはるかに美しいのである。
 標本に添付された研究レポートは、それだけを研究論文として見れば、多少の物足りなさを感じる箇所もあるが、読む人に蛾の魅力を伝えようとする気持ちが強く現れ、楽しく読める。
 今後は、研究をさらに深め、蛾をテーマとした新しい展開の研究作品を期待したい。


準大賞

「アカボシゴマダラの生態をさぐる」三加茂町立三加茂中学蝶研部(徳島県/中1)

奄美大島のアカボシゴマダラをエノキ(原産地ではクワノハエノキ)を餌に徳島県で飼育した記録で、よくできた優秀作品である。
 蝶の飼育に必要な基本的な知識と技術はすでに修得している蝶の愛好家のグループが、目的を持って新しい種類の飼育にチャレンジした、いわば飼育観察の上級編。このレベルに達していれば、大人の、それもマニアの部類に入る人からの研究報告といってよい。
 飼育期間を通して毎日詳細に記録された観察日記は、アカボシゴマダラの生活史を知る優れた資料となる。
 手堅くまとめられたレポートは読みやすく、写真と図を多用した構成もよい。表紙に使用した脱皮不全の成虫の写真など、いかにも蝶のマニアが喜びそうなもので、「なかなかやるね」というのが審査員の共通した感想であった。上位の賞を獲得するのにふさわしい作品である。
 ただ、高学年であることと、すでに蝶のことを専門的に学んでいるグループであるということを考慮すると、オリジナリティとパンチ力に若干の物足りなさを感じた。
 テーマの必然性(あるいはテーマに対する思い入れ)が、もう少しうまく表現されていると、作品がもっと活きいきしたものになったと思う。
 今回の作品に参加した3年生は、本賞に応募できる最後の年となったが、研究成果を後輩に伝え、これからも三加茂中学蝶研部が、継続的に作品を応募されることを願う。

「寺田寅彦とぼくと風の中のトンボ」 谷山 太郎(埼玉県/小4)

トンボの翅や飛翔に関する研究である。寺田寅彦の文学作品を研究のきっかけとし、研究論文に叙情性を持たせることに成功している。
 個性的な発想と、工夫をこらしたアプローチで風の中を舞うトンボの姿にせまろうとしており、「飛ぶものは美しい」という言葉があるが、この作品もトンボは飛ぶから美しいのだという思いに貫かれている。
 文章もよく、添付された写真などの資料も充実している。ただ、テーマがちょっと大き過ぎたために、内容がやや拡散し、風の中のトンボにせまりきれなかったことが悔やまれる。
 今後も継続して研究を続けてもらいたい。そして、年ごとにテーマをもう少ししぼり込んですすめると、何年後かに素晴らしい作品として羽化すると思う。

「ぼくが育てたチョウたち」 清水 翔平(京都府/小4)

自宅とその周辺で飼育観察した5種95頭の蝶の記録。庭に食草を植え、交尾や産卵から、羽化して飛び去るまでを丹念に観察している。
 写真や脱皮がらなどの資料も豊富で、まとめ方もよく、見て楽しい作品となっている。
 小中学生向けの昆虫本は多いが、この作品を見ていると、小中学生が実際に観察した記録だけでも立派な本が作れ、その方が若い読者に親しまれるだろうから、へたな大人が作る本より貢献度は高いのではないかと思えてくる。
 これだけの飼育観察の中から生まれた様々な「なぜ?」を解消する研究で、また大賞を狙ってもらいたい。そしてまた、もっと大きな「なぜ?」が生まれてくることを期待する。

「昆虫カルタ」三谷 妃佐恵(大阪府/小3)

 前回カマキリの飼育観察で入選した作者が、今回はカルタという図画工作的な要素もある文学作品で応募し見事受賞した。審査会では、だれもがこの作品の前で立ち止まり、にこにこしながら熱心に読んでいた。
 つべこべ解説するより、その一部を紹介した方が、この作品の魅力が理解できるだろう。
「そろそろと ゆれてカマキリ ねらってる」
「むしのかお いちばんかわった ショウリョウバッタ」
「モンシロチョウ さなぎのときに かおみえる」
「わたしひとり アメリカから シロヒトリ」
「んーとね こんちゅう いるとたのしいよ」
 面白そうなので自分でもまねをしてみたが、昆虫という題で50音の詠み句を考えるのは、意外に難しいものである。
 詠み札、絵札計100枚のセットで自作の美しい箱に収められていたことを付け加えておく。


優秀賞-標本部門

「私と日昆協の六年間」高和 真名(東京都/小6)

 高和さんはこれまでにも何度も標本を応募されているが、今回は、小学校生活最後の年、ひとつの区切りとして、これまでの6年間に集めた標本の中からよいものをセレクトして、「総集編」を構成し賞に挑まれた。
 いわばオールスターチームであるから、標本としてのできのよさはいうまでもない。
 小学生でも時間をかければこれだけのものが揃えられるという、よいお手本となった。
 また標本には、思い出の虫を綴った楽しいレポートが添付されている。

「むしのひょうほんとむしとりにっき」中村 和寛(福島県/小1)

 美しい手作りの標本箱に並べられた各種の昆虫標本と昆虫採集絵日記。それに、採集した昆虫の種類と数、観察したことなどをまとめた研究レポートがつく。展翅展足に苦労の跡がうかがえる標本は、1年生の作品としては上々のできだ。
 標本やレポートもさることながら、審査員を一番喜ばせたのは、実は添付された絵日記の内容であった。その素直でシンプルな文章からは、虫捕りに夢中になっている昆虫少年の心情が読みとれる。
 「6月28日 みやまくわがたをつかまえた。すごくどうもうで、しろすじかみきりをやっつけてしまった。けどそのしたいはかたずけてない。そのうちひょうほんにする」「7月25日 〜みやまあかねは、とれなくて いじけたらおとうさんとおかあさんにおこられてやだった」

優秀賞-研究論文部門

「ライトトラップにようこそ」柳下 良平(東京都/中1)

ライトトラップに集まる昆虫の種類と数を調べた作品。計画的で手堅くまとめられた秀作である。時間ごとに昆虫の集まり具合を見るといった研究はこれまでにもあったが、このように実際に細かく調べ、標本まで添付してきたものは初めてであった。
 たった二晩の調査でも、標本の整理にはかなりの日数を費やしたしたことであろう。
 また、まとめ方もきちんとした論文の体裁を整えており、巻末には謝辞や参考文献まである。  
 ただ今回は、柳下君にとって初めてのライトトラップであり、限られた時間内での調査であったために、第一報といった段階で終わっているのが残念である。
 今後も研究を継続し、内容を深めてもらいたいと思う。ただし、こうした全部を採集し、それを標本にして整理をするといった、手間のかかる調査方法は、組織的にやるのに向いている。そこでこれからは、仲間を集めて大ぜいでいっしょに研究するか、もし一人でやるならば、どこか一つの部分に注目した方がもっとよい作品になると思われる。

優秀賞-文学部門

「俳句−自然の中の昆虫たち−春・夏・秋・冬」加藤 正和(千葉県/小6) 

5歳から11歳までの作品集。昆虫や自然をテーマにした俳句(173句)が季節ごとに分類され、きれいに製本されている。
 こうした読みやすさは、文学作品のみならず、論文作品にとっても重要なもので、審査員は人に読んでもらいたいという思いの現れと解釈している。
 俳句の数をどれぐらいにまとめるかは難しいところだが、この作品の場合、作品をもう少し厳選した方がよかったかもしれない。俳句のように洗練された芸術は、引き算が重要なポイントとなるもの。また、作った年を書き加えると、作者の感性の成長ぶりなどが分かってより興味深いものになったかもしれない。
 いずれにせよ楽しく読ませていただいた。以下はそのごく一部。
「水滴に顔をつっこみ飲む螢」
「小くわがた仲間のめすに穴をあけ」
「冬越しの蝶のさなぎが縁の下」
「冬の蜂タイツにひそみ足をさす」


審査員賞

相笠昌義賞

「彩色蝶類図譜屏風」阿部 彩乃(東京都/中2) 

毎年工芸的な作品で応募されている作者が、今年は伝統的な枕屏風(?)で挑
戦した。
 黒い背景に、標本を模した100種ほどの蝶の切り抜きが舞う、なかなか大人っぽいデザイン。中学生の作者に対し不謹慎な表現かもしれないが、どこか艶っぽい魅力のある作品となっている。
 惜しむらくは、これまでの作品に比べ作りが華奢になってしまったことと、縁取りの豪華さに比べ、主役の蝶が弱く感じられることであろうか。
 来年は何かと忙しい年になろうが、本賞応募資格の最終学年でもあるので、是非とも応募してもらいたい。


海野和男賞

「昆虫写真日記」佐藤 尊(千葉県/小6)

 写真機材が進歩し、アマチュア写真家も相当数いると思われるのにもかかわらず、写真部門の応募点数は少なく、力のある作品に出会う率も低い。よい写真を撮るということは、それだけに難しいことなのであろう。
 そんな中でこの作品は、なかなかよく撮れている。また、過去の応募作品の中には昆虫そのものに興味がないのか、昆虫の名前にすら注意をはらっていないものもあるのに、この作品は同定に多少の誤りがあるものの、あまり有名でない種類についてもよく調べている。あとは、それぞれの写真をとった時の状況や印象がもっと書き加えられれば、昆虫の生態写真として、もっと価値の高いものになる。

木村義志賞

「ヤゴの飼育・羽化」村石 朋由樹(千葉県/小4)

 何種類かのトンボの成虫と羽化の抜けがらを並べた2箱の生態展示標本。非常に解りやすく説得力のある作品である。
 一見よくありそうなアイデアだが、何種類ものヤゴを羽化するまで飼わねばならないから、実際はなかなか骨の折れる作業となる。
 標本には簡単な観察レポートが添付され、ヤンマ捕りのコツなども紹介されている。飼育方法に関する記載がないのが少し残念であった。
 今回はちょっとふれただけで終わった翅の研究と、飼育技術に関する報告が充実すれば、よりよい作品になるであろう。

泉麻人賞

「オオカマキリ日記」浅川 芳直(宮城県/小1)

 3年間に及ぶオオカマキリの飼育観察日記。ノンフィクションの文学作品であるが、研究論文としても通用する内容を持っている。観察は微に入り細にに入り、カマキリの生態や飼育の見所を描写し、そのときどきの作者の気持ちも読みとれる。
 この日記を読めばだれもがカマキリを飼ってみたくなるであろう。
 今後もカマキリの飼育と観察を続け、そこで得た知見を研究論文としてまとめることをお奨めする。そしてこの日記は、一生の宝として大切に保管しておくこと。
 単なる偶然ではあろうが、これまでカマキリの飼育日記には優れた作品が多かった。この作品はそれらに勝るとも劣らない作品である。カマキリには、子供達の感性を刺激する何かが備わっているのであろうか。


昆虫賞

◆アリキリデス賞

「今年の昆虫採集」中倉 啓介(東京都/中1) 

標本の作品。文字通り作者の今年の昆虫採集の成果をまとめたもの。
 展翅の技術はまずまず。これで長期間保管して翅の反りや垂れが出なければ蝶の愛好家としての及第点である。甲虫の展足の方は種類によって今一歩のものがある。ポーズは好みでもよいのだけれど、もう少しカチッと見える姿に整えた方が印象がよくなるだろう。研究してほしい。
 あと、中学生には研究レポートの添付が義務づけられているが、この作品の場合、研究レポートなのか採集日記なのかがはっきりせず、中身も物足りない。そのあたりがもう少し充実すれば、より上の賞がねらえるだろう。

◆モルファ蝶賞

「ゆうがにまうチョウたち」・ 柳下 麻里奈(東京都/小5)

 今回は美術作品の応募が非常に少なかったが、この作品を含め3点が見事入選している。中でもこれは、審査会場の注目を集めた作品のひとつである。
 内容は花びらなど天然の植物を貼り合わせて作った貼り絵で、高原のお花畑を様々な蝶が舞うようすが描写されている。
 おどろくべきは、それぞれの蝶が、種名が分かるほど正確に描かれていることだ。天然素材の色彩と質感は、やはり同じ天然素材の翅を持つ蝶の描写に向いているということであろうか。自然の色彩の豊かさを再認識させられる作品である。
 特にアサギマダラとヒョウモンは、よくもまあこんなにそっくりな色の花びらを集めてきたものだと思うほどのできであった。

◆オオクワガタ賞

「ブナ林のクワガタムシ」穐山 大輝(鳥取県/小4)

 クワガタというと、クヌギやコナラの雑木林の昆虫といった印象が強いが、ほかの林に棲む種類もいる。クワガタはオオクワガタだけではないのである。
 そんなことを思い出させてくれるのが、地元の大山のブナ林に棲息するクワガタを研究したこの作品。
 穐山君はクワガタのベテランと見え、クワガタの知識も豊富で、好きな種類はルリクワ、コルリとなかなかのクワガタ通である。フィールドでの体験と豊富な知識を基にしたこの作品は、大山のクワガタ概論といったまとまりを見せている。
 今回は、クワガタに関する基本的な情報を並べた報告なので、次回はもっとテーマを絞った研究や、クワガタに対する熱い思いが感じられる作品で、是非とも大賞にチャレンジしてほしい。

◆オオルリアゲハ賞

「ダイミョウセセリ大研究/カバマダラ発見」・ 足立 拓郎(和歌山県/小4)

 ダイミョウセセリの分布と幼虫の飼育についての研究論文と、大阪府富田林市でカバマダラが捕れた事件に関するレポート。
 大人向けの愛好家雑誌の記事を思わせるような内容とまとめ方で、蝶の研究としては非常にレベルの高い作品である。一人の昆虫愛好家として興味深く、楽しく読ませていただいた。
 それでもこの作品が準大賞や優秀賞の選からもれたのは、研究のオリジナリティに少し物足りなさが感じられたからである。
 豊富な情報量を基に、これまでの大人の愛好家達が作った路線を進むことは、一概に悪いこととはいえないが、たとえ幼稚で荒唐無稽になってもよいから、どこか斬新な切り口がほしいと思う。次回に期待したい。

◆トリバネアゲハ賞

「庭で育てたオオゴマダラ 夏冬」高良 優樹(沖縄県/小2)

 南西諸島を代表する蝶のひとつ、オオゴマダラの飼育観察記録である。こうした、地元の特産種をテーマにしてくれると、南北に長い日本で、昆虫の研究コンクールをやっていることの歓びを感じてしまう。
 高良君は、オオゴマダラを飼育し、その成長を丹念に観察し、写真と文で記録した。また、季節による成長の変化や、マーキングをほどこした蝶を放し、追跡も試みている。この点については、今後の研究に期待したい。
 ところで、昆虫を飼育すると情が移り、自分と飼育した可愛い昆虫といった関係で捉えがちだが、今後は自然の中での昆虫の位置という視点で観察すると、より研究が深まると思われる。

◆アトラスカブト賞

「ぼくと虫たち」・ 田中 誠明(東京都/小2)

 写真と文で綴る昆虫日記。いろいろな昆虫の観察記録や調べごと、感想などが絵日記のようにまとめられている。
 蝶、蛾、クワガタ、ハナムグリ、カマキリ、など、身近な昆虫を捕まえては飼い、捕まえては飼いしている少年の、楽しい生活が伝わってくるほのぼのとして作品。なかなか楽しませていただいた。
 ただ、文学部門への応募とはいえ、具体的なデータなどディテールを明確にすると、もっと人をひきつけることができる。あと、字がちょっと読みにくいのが難点。人に読んでもらうために書くのだから、ます目の用紙を使うなど、書き方をもう少し工夫するとよくなる。


入選-研究論文部門

「金沢中学校におけるセミのぬけがら調査-第7報」
横浜市立金沢中学校生物部(神奈川県/中1)

 昆虫研究大賞の定番、金沢中学校のセミのぬけがら連続調査である。まずは、毎年きちんとこの報告を送って下さる、金沢中学校生物部の諸君と指導者にお礼を申し上げたい。
 7年目となり、蓄積されたデータに法則性が見いだせず、研究の進め方に苦慮されているようであるが、同じ方法で毎年正確に基礎データを集めることも、立派な研究であることを申し上げたい。
 例えば、セミの成虫の発生に関して、何か仮説をたて(セミの発生に関するこれまでの文献を調べれば、よいヒントがみつかるだろう)、それを証明するために実験や観察を行うなど、新しいことを始めてみれば、次の展開が見いだせるのではないだろうか。もちろんその場合も、これまでのデータ収集は続けてもらいたいと思う。

「ツマグロヒョウモンは、なぜ4本足か?」
中池健史、田中政裕、中野大清、東裕也(熊本県/小6)

 前肢が退化した蝶に注目し、6脚の蝶と比較してその理由を考察した興味深い作品。
 蛹の形態に注目し、実際に飼育実験を行っている。作者としては、研究中このあたりが最も面白かったのではなかろうか。お行儀よくまとめ過ぎたので、それがうまく伝わらないように思う。
 本で得た知識を駆使して、きれいにまとめることも楽しい作業ではあるが、せっかく生身の蝶を飼って実験をおこなったのであるから、実際に見て感じたことをもっと書いてもよかったと思う。科学的にまとめようとする思いが強すぎて、4人の作者の個性が薄れてしまったのが残念。
 これまでに何度もいってきたが、昆虫の研究には終わりがないのだから、この賞は荒削りな中間報告でもいっこうにかまわないのである。

「チョウの幼虫の飼育と観察」鳥居 真由子(和歌山県/小6)

 まさにタイトル通り、ベーシックで堅実な内容を持つ優れた研究論文である。蝶の飼育観察記録は多いが、何種かの蝶の成長のようすを、一頭ずつ丹念に時間をかけ調べ続けたという点で高く評価される。また、添付された羽化の写真なども、なかなかよく撮れていた。
 今後はこの研究成果をどう発展させるか、興味はつきない。中学生になると何かと忙しくなるだろうが、その分行動範囲も発想も広がるだろうから、これからも蝶の研究を続け、来年も応募されることを願う。

「カイコの観察と実験」山崎 充慶(長野県/小5)

 カイコの飼育観察記録である。この研究の優れたところは、単にカイコを飼育して観察するだけでなく、クワ以外の植物もためし、人工飼料にも思いが及んでいる点である。
 この実験は昆虫の生態や生理を知るひとつのヒントになる。また、人工飼料の研究は、これまでの応募作品にはなかった、昆虫の生理学的な研究に発展する可能性があり、期待が持たれる。
 また蝶や蛾を、手に入りやすい代用食草や人工飼料で育てることは、飼育愛好家の夢でもあるから、そうした意味でもこの作品は興味深く面白い作品であるといえる。
 どうか今後もがんばってもらいたい。

「わたしの昆虫記 パート2」井奈波 由貴(岐阜県/小4)

 この作品は、もっと上位にいてもおかしくないオリジナリティあふれるすばらしい内容を含んでいる。マンガを多用した独特の表現は臨場感があって分かりやすく、作者の表現力の豊かさには感心した。
 特に、普段見落とされがちな、カメノコハムシやサシガメにスポットをあて、詳細な飼育観察とユニークな実験を展開したことは注目に値する。
 華やかな蝶やカブト・クワガタにばかり人気が集まる状況に一石を投じ、今後の応募者に一つの指針を示す素晴らしい作品である。
 ただ少し残念だったのは、3種の昆虫の研究が並列に並び、しかも同じようなテンションで書かれているため、読者の興味が分散し、それぞれのよさが埋もれてしまったことである。
 賞に参加する「作品」には、研究のどの部分に力を入れ、何を強調するかといった、編集的な視点も必要だろう。
 いずれにせよ、昆虫と表現について非凡なセンスを持つ作者なので、パート3、パート4が本当に楽しみである。

「かぶと虫のかんさつ Vol.3」七島 孝太(千葉県/小3)

 昨年応募をしてくれた作品の続編で、今年はカブトムシの身体の作りに着目し、詳しくレポートをしてくれた。
 特に、後翅の模型をトレーシングペーパーで作ったものは工芸的な要素もあって興味深く、実際の翅を細かく観察しないとできないものである。
 前回の作品に、新たなデータを加えているもので、将来的には、「カブトムシのすべて」といった作品に発展することが期待される。

入選-標本部門

「輝く蝶」三輪 眞大(東京都/小6) 

標本の製作技術はかなりの水準にあるが、小形種は今一歩。シジミの展翅など大人のコレクターでも嫌がる(へたくそな)人が多いから、今のうちに練習して、上手になっておくと得である。
 来年は中学生。何かと忙しくなるだろうが、何かテーマを決めれば、時間を有効に使えるだろう。どうかこれからも昆虫採集に励んでもらいたい。楽しい報告を楽しみにしている。

「とれたぞ!! ヒメギフチョウ」伊藤 岳(秋田県/小2) 

各種昆虫の標本と資料。捕れたものをいろいろと並べた楽しい標本で、昆虫趣味の原点といった作品。作者にとって、特に印象的だったのが、箱の中央に置かれた1頭のヒメギフチョウ。それがこの作品のタイトルとなっている。小学2年生でこれだけきれいな展翅ができればいうことなし。今後の活躍が期待される。


2000年2月ニュースレター42号


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