我々が昆虫協会へお金を払う理由
木村 義志
日本昆虫協会はただ今大変な財政難ということであります。財源の大部分は会費ということでありますから、お金が足りないとすれば会費の集まりが悪いか、会員が減っているということでありましょう。
そこで今一度、我々がこの会に会費を払う理由について考えてみました。
昆虫協会ぐらいサービスの悪い会はないといった意見を聞くことがあります。会員になってはみたものの、たいして得した印象もない。それでいつの間にか会費を払わなくなったという方も多いでしょう。昆虫協会が単なる昆虫愛好同好会と考えるなら、それはもっともなことです。
しかし、その実態はただの昆虫同好会などではありません。聞いて驚くなかれ、
昆虫愛好家の権利拡大をもくろむ圧力団体だったのです!
西に採集禁止地域ができれば「その根拠を示せ」と質問状を送り付け、東に昆虫採集バッシングの報道があれば「記事を訂正し謝罪せよ」と抗議に駆けつけます。そのくせ、新聞、雑誌、テレビやラジオなどに登場するチャンスがあれば、微笑みながら「昆虫採集は正しくて楽しい」というコメントを繰り返します。
そういえば、会長、副会長を始め事務局長、編集委員に至るまで、ヒゲを生やした怪しいオヤジばかりです。いずれ詐欺師か総会屋か。ただし、彼らには「濡れ手にアワの賛助金」といった金集めの才覚はなさそうです。
もしこの会がなければ、今ごろ我々はどうなっていたでしょうか?
「人でなし」「殺虫鬼」と罵られ差別されるか、補虫網を取りあげられ、代わりに首からルーペをぶら下げて探虫会といった訳の分からない状況に陥っていたかも知れません。オーバーに聞こえるかもしれませんが、この会ができる直前には、一部でこのような状況が起き始めていました。それがこの会の存在によって、少しずつではありますが改善されています。
昆虫協会の存在意義というのは、昆虫採集について下手な事をいうと、理詰めで執拗に反論してくる「昆虫愛好家の集団」の存在を世間に認知してもらう、ことにあります。さらに進んで、行政などが昆虫の保護計画を立てるとき、ひとつの考え方を代表する集団として意見を聞いたり、協力の依頼が来るようになればなおけっこう。
そんな下品な圧力団体に荷担したくないという方もいらっしゃるでしょうが、残念なことに、それが好きであっても嫌いであっても、昆虫協会のこうした機能は必要です。虫のことなど何も考えたこともないような人に、嫌な思いをさせられるのはもう懲り懲りなのです。
いずれにせよ、スポンサーがいるわけでもなく、どこかからお金をゆすり取るわけでもなく、弱い個人が少しづつお金を出し合って、自分たちの権利を守るために組織を作ったのですから、
昆虫協会は日本一清らかで貧しい圧力団体です。
役員でもある私がこんなことをいうのも変ですが、この会には会費分以上のメリットがあると思います。ただ手元に残るのは領収書とニュースレターだけなので、それが分かりにくいのです。
(日昆協ニュースレター第28・29号、1997年2月10日掲載)
|